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飲み会のあとに「汗でお酒を抜こう」とサウナへ向かったり、二日酔いの朝に「サウナでスッキリしたい」と思ったりしたことはありませんか。X(旧Twitter)を見ても、二日酔いの朝にサウナへ行ったという投稿はめずらしくありません。
ところが、消費者庁や厚生労働省は、飲酒後(二日酔いも含む)のサウナや入浴を避けるよう呼びかけています。この記事では、消費者庁の注意喚起資料、厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」、e-ヘルスネット、フィンランドの研究、医師へのインタビュー記事などをもとに、飲酒とサウナの関係を整理しました。体の中で何が起きるのか、何時間あければよいのか、サウナ後の1杯はどう楽しめばよいのかを、順番に見ていきます。
飲酒後のサウナについて公的機関は何と言っている?
まずは「飲酒後のサウナはだめなのか」という疑問に、公的機関の資料で答えていきます。ここでは消費者庁と厚生労働省、それぞれの資料に書かれていることを確かめましょう。
消費者庁は「飲酒後(二日酔いも含む)は利用を避ける」と明記
消費者庁は2024年6月5日に「サウナ浴での事故に注意 ― 体調に合わせて無理せず安全に ―」という注意喚起を公表しました。この資料では、事故につながりうる危険な入り方の例として「体を温度に慣らさずいきなりサウナ室に入る」「我慢して長時間のサウナ浴をする」と並べて、「飲酒後にサウナ浴をする」が挙げられています。
入浴前の注意事項の中には、サウナを避けるべきときとして、体調のすぐれないとき、熱のあるとき、食事の直後、運動の直後と並んで「飲酒後(二日酔いも含む)」がはっきり書かれていました。ポイントは、かっこ書きで二日酔いまで含めていることです。「もう酔いはさめたから大丈夫」と自分で感じていても、前の晩のお酒が残っている状態は避ける対象に入っていると読めます。
同じ資料によると、消費者庁の事故情報データバンクには、2024年4月末時点でサウナ浴に関する事故情報が78件登録され、受傷者は82人でした。2014年度から2021年度までは年に平均4件程度だったのが、2022年度以降はそれぞれ10件に増えています。受傷内容は「やけど」31件、「切り傷・擦り傷等」24件、「骨折・打撲」14件の順に多く、40歳以上では「めまい・意識障害」や「循環器障害」も含まれていたそうです。
受傷者の半数以上にあたる45人は「入浴施設」でけがをしていました。傷病の程度は、不明なものを除くと「1〜2週間」が18人で最も多く、「治療1週間未満」が14人、「1か月以上」が13人です。事故事例には、熱いと思いながら10分間ヨガのポーズをとり続けてお尻にやけどをした例や、個室サウナの床の段差で足を滑らせて肘を打撲した例も載っていました。
この78件のうち何件が飲酒に関係していたかまでは、公表ページには書かれていません。そのため「サウナ事故の多くはお酒が原因」とまでは言えないのですが、少なくとも消費者庁は、飲酒後の利用をはっきり「避けるべきとき」に入れています。三重県伊勢市の消費生活センターも、この資料をもとに「食事・運動の直後、飲酒後(二日酔いも含む)は利用しない」と市のホームページで案内していました。
厚生労働省の飲酒ガイドラインも入浴を「避けるべき行動」に
厚生労働省が2024年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」にも、飲酒と入浴の関係が出てきます。ガイドラインでは「避けるべき飲酒等」として、一時多量飲酒や他人への飲酒の強要などと並べて、「飲酒中又は飲酒後における運動・入浴などの体に負担のかかる行動」が挙げられていました。理由は「飲酒により血圧の変動が強まることなどによって、心筋梗塞などを引き起こす可能性や、転倒などにより身体の損傷を引き起こす可能性があります」と説明されています。
興味深いのは、この部分の参考文献として、フィンランドで行われた「Alcohol and sauna bathing(飲酒とサウナ浴)」という1992年の研究が挙げられていることです。つまり、国のガイドラインが「飲酒後の入浴は避けて」と書く根拠のひとつに、サウナの研究が使われているわけですね。この研究の中身は、次の章でくわしく見ていきましょう。
厚生労働省のe-ヘルスネット「飲酒と事故」でも、飲酒・酩酊によって起こる事故として「交通事故」「転倒・転落」「溺水」「凍死」などが並び、溺水について「飲酒後に入浴し溺水する事例が多く、公衆浴場や川・海での溺水もみられます」と書かれています。サウナ室そのものに湯船はありませんが、施設には水風呂や浴槽、濡れた床があります。酔ったまま移動すれば、転倒や溺水の危険がある場所だと考えておいたほうがよさそうです。
公益社団法人アルコール健康医学協会の「適正飲酒の10か条」でも、第9条が「飲酒後の運動・入浴 要注意」です。飲酒後の入浴は血圧の低下をまねき、脳卒中を起こす危険性があると説明されていました。公的機関と専門団体が、そろって同じ方向の注意をしていることがわかります。
なお、このガイドラインは基礎疾患のない20歳以上の成人を中心に書かれています。そのうえで、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として「1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」という数字も示していました。ふだんからこの量を超えて飲む習慣がある人は、サウナの前後に限らず、飲む量そのものを見直すきっかけにしてみてください。
お酒を飲んでサウナに入ると体の中で何が起きる?
では、なぜ飲酒後のサウナは避けたほうがよいのでしょうか。ここでは「血圧」「脱水」「アルコールの分解」の3つに分けて、研究や医師の解説を見ていきます。
研究では上の血圧が136から113mmHgに下がった
厚生労働省のガイドラインが参考文献に挙げた1992年の研究(Roineら、Journal of Internal Medicine)では、健康な男性ボランティア10人を対象に、大量の飲酒とサウナ浴を組み合わせたときの心拍、血圧、血液中の電解質などが調べられました。論文の要旨によると、サウナに入ると心拍数はお酒を飲んでも飲まなくても同じように上がりました。一方、上の血圧(収縮期血圧)は、お酒なしのサウナでは最初の値のままだったのに対し、お酒とサウナを組み合わせると136±4から113±3mmHgへと大きく下がっています。
この研究では、不整脈(心室性期外収縮)の回数は、サウナだけでもお酒と組み合わせても増えなかったと報告されていました。そのうえで結論として、健康な若い男性では不整脈は起こりにくいようだが、サウナと飲酒を組み合わせると低血圧のリスクが高まる、とまとめられています。対象が10人と少なく、健康な若い男性に限られている点には注意が必要です。持病のある人や中高年では、結果が同じとは限りません。
筑波大学准教授でアルコール低減外来を担当する吉本尚医師は、焼酎メーカー三和酒類の「いいちこスタイル」のインタビューで、この仕組みをわかりやすく説明しています。アルコールには血管を広げる作用があり、飲むと一時的に血圧が下がります。その状態で体が温まると、さらに血圧が下がり、意識を失ったり目の前が真っ暗になったりすることも起こりうるそうです。個人差はあるものの、上の血圧が70〜80以下になると症状が出る可能性がある、とも話していました。
さらに吉本医師によると、サウナには湯船のような水圧はないものの、一般的な入浴より高温であることが多く、血流や血圧への作用は大きいと考えられるとのことです。熱くなったら水風呂に入り、また出たり入ったりを繰り返すため、血圧の上がり下がりは普通の入浴より激しくなると考えられます。そのため「飲酒後のサウナは控えるべき」というのが吉本医師の答えでした。
アルコールと汗で脱水が重なる
2つ目は脱水です。アルコールには尿を増やす作用(利尿作用)があります。長野県の佐久市立国保浅間総合病院の外科部長で「肝臓先生」の愛称でも知られる尾形哲医師は、ヤッホーブルーイングのサイト「よなよなの里」で、サウナの前や最中にアルコールをとると、利尿作用で水分が失われたところに大量の汗をかいて脱水症状を起こしてしまう、と説明しています。脱水が進むと血液が濃くなり、心拍数を上げるアルコールが心臓の負担をさらに増やすとも話していました。
どのくらい汗をかくのかも見ておきましょう。消費者庁の資料では、10分間のサウナ浴で汗が500mL程度出るという報告が紹介されています。これは体重の約1%にあたり、人は体重の1〜2%の水分を失うと脱水症になる、と書かれていました。日本サウナ・スパ協会は、一回のサウナ浴で出る汗の量を約300〜600mlとしています。尾形医師は、サウナ1セットで150〜300mlほど水分を失うとしています。3セット入れば、少なく見積もっても450ml、多ければ900mlほどになる計算です。お酒を飲んだあとは、すでに尿で水分が出ている状態なので、そこにこれだけの汗が加わることになります。
広島大学の救急医でサウナ好きでもある三谷雄己医師は、日経Goodayの連載で「アルコールは血管を拡張し、脱水を引き起こします」と書き、低血圧や不整脈が起こりやすくなると説明しています。体内でアルコールを分解するときにも水分を使うため、その点でも脱水になりやすいそうです。三谷医師は、救急医としてアルコールに関連したサウナ中の救急搬送に何度も遭遇し、心肺停止に至った事例も経験したと記事の中で述べていました。
脱水になると、のどの渇きだけでなく、だるさや頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。消費者庁の資料にも、脱水が進むと全身倦怠感や頭痛、めまいなどを引き起こし、重い場合は死に至ることもあると書かれています。「サウナのあと、なんだかいつもよりクラクラする」と感じたときは、飲酒による脱水が重なっていないか思い出してみてください。
「汗でお酒が抜ける」は医師が否定している
3つ目は「サウナで汗をかけばお酒が抜ける」という考え方です。これは、取材した医師たちがそろって否定していました。吉本医師は、汗からのアルコール排出はゼロではないがごくわずかだと話しています。むしろ全身の血流がよくなることで、アルコールを分解する肝臓へ行く血流が減るのではないかと言われているそうです。尾形医師も、汗や尿で出るアルコールは総量の1割以下で、無毒化のほとんどは肝臓で行われると説明していました。
アルコール健康医学協会の「適正飲酒の10か条」でも、お酒を体から抜こうとして入浴するのは逆効果で、むしろアルコールの分解は遅れると書かれています。運動や入浴をすると血液が筋肉に分散され、内臓に集められないため、アルコールの代謝速度が遅くなってしまうという説明です。秋津壽男医師もコラムの中で、サウナで体から出てくる水滴は単なる汗で、アルコールは含まれていないと書いていました。尾形医師は、汗をかいても水分補給が十分でなく血流が悪い状態では、肝臓の働きも悪くなり、アルコールの無毒化が進みにくくなると考えられるとも話しています。汗をたくさんかいたからといって、お酒が早く抜けたことにはならないわけです。
ダイヤモンド・オンラインに掲載された、サウナ好きの医師2人の対談でも、『医者が教えるサウナの教科書』の著者である加藤容崇医師が「サウナが二日酔いにいい」という説を取り上げ、お酒を飲んだ後にサウナに入るのはアセトアルデヒドの血中濃度が上がってしまうので逆によくない、と話していました。すっきりするのは、サウナの別の作用ですっきりしたように感じるだけだそうです。
もうひとつ気をつけたいのが、飲んでからの時間です。吉本医師によると、アルコールは口から入って体に吸収されるまで20分から30分ほどのタイムラグがあります。飲み終わって5分、10分後に入浴すると、急に酔いが回るように感じるかもしれないとのことでした。三谷医師も、サウナで血流がよくなることで全身にアルコールが巡り、酔いが回りやすくなるといわれていると書いています。酔ってサウナ室で寝込んでしまうと、熱中症ややけどの危険も高くなります。
二日酔いの朝のサウナはどうなの?
「夜に飲んで、翌朝サウナ」というパターンもよく見かけます。ここでは、二日酔いのときのサウナと、お酒が抜けるまでの時間の目安を見ていきましょう。
二日酔いの体は脱水や低血糖が重なりやすい
厚生労働省のe-ヘルスネット「二日酔いのメカニズム」によると、二日酔いの症状がなぜ起きるのかは、実はまだはっきり解明されていません。有力な説として、軽い離脱症状、ホルモン異常による脱水や低血糖、体の酸塩基平衡の乱れ、炎症反応、アセトアルデヒドの影響、お酒に含まれる不純物などが挙げられ、これらが複雑に絡み合って起きると考えられているそうです。
この説明の中に「脱水」が入っている点が大事なところです。二日酔いの朝は、すでに体の水分が足りていない可能性があります。医師の秋津壽男さんも、ニュースサイト「アサ芸プラス」に掲載された2016年のコラムで、二日酔いを脱水症状と説明したうえで、アルコールで脱水になっているところにサウナに入れば、より深刻な脱水症状を招くと注意していました。
前の章で見たとおり、消費者庁はサウナを避けるべきときとして「飲酒後(二日酔いも含む)」と書いています。Xでは「二日酔いでもサウナで復活した」という投稿も見られますが、これはあくまで個人の感想です。医師の解説では、すっきりした感じはサウナの別の作用によるもので、アルコールが抜けたわけではないとされていました。体調が悪い朝ほど、サウナより水分補給と休息を優先したほうがよさそうです。Xには「お酒を飲んだ後も二日酔いの時もサウナはよろしくないと思う」「たくさんお水飲んでね」と呼びかける投稿もありました。
e-ヘルスネットによると、二日酔いは旧約聖書にも記述があるほど歴史が古いのに、定義や診断基準はいまだに示されていないそうです。原因がひとつではない以上、「サウナで汗をかけば治る」といった単純な対処法は期待しにくいと言えます。
もし二日酔いの朝に施設へ来てしまったら、サウナ室に入る前にまず水を飲み、頭痛や吐き気、だるさが残っているなら、その日はサウナ室には入らない判断も選択肢に入れてください。消費者庁は体調のすぐれないときの利用も避けるべきときに挙げています。お湯につかる場合も、飲酒後のリスクを下げる方法として吉本医師はシャワーだけにすることを挙げていました。
アルコールが抜けるまでの時間の目安
では、飲んだあと何時間あければよいのでしょうか。いいちこスタイルの記事には、吉本医師の解説とあわせて、総アルコール量ごとの分解にかかる時間の目安表が載っていました。純アルコール20gで4時間、40gで8時間、60gで12時間というように、20gごとに約4時間ずつ増えていきます。表では100gで20時間、120gで24時間とされていました。
自分が飲んだ純アルコール量は、厚生労働省のガイドラインにある計算式で出せます。「お酒の量(ml)×アルコール度数(%)÷100×0.8(アルコールの比重)」です。たとえば5%のビール500mlなら、500×0.05×0.8=20gになります。同じ式で計算すると、7%の缶チューハイ350mlは約19.6g、15%の日本酒1合(180ml)は約21.6gです。
この目安表にあてはめると、5%のビールのロング缶(500ml)を2本、日本酒なら2合ほど飲んだ夜は約40gで、分解に8時間ほどかかる計算になります。夜11時まで飲んでいたら、翌朝7時ごろまではまだアルコールが残っているかもしれない、ということですね。4本なら約80gで16時間なので、翌日の午後まで残る可能性があります。
厚生労働省のガイドラインでは、1回の飲酒機会で純アルコール60g以上を飲む「一時多量飲酒」を避けるべき飲酒として挙げています。60gは目安表では分解に約12時間かかる量です。歓送迎会や旅行先の宴会でこのくらい飲んだ夜は、翌日の昼ごろまでサウナを入れない予定にしておくと安心ですね。
ただし、これはあくまで目安です。厚生労働省のガイドラインでは、女性は一般的に男性より体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も少ないこと、高齢者は同じ量でも酔いやすくなることが書かれています。体質によって分解酵素のはたらきも大きく違うそうです。吉本医師は、飲みすぎてしまった場合は翌朝に入浴するよう勧めていました。「計算上は抜けているはず」と思っても、酔いや体調の悪さが残っているなら、その日はサウナをあきらめるのが安全です。
サウナ後にお酒を楽しむなら
ここまでは「飲んでから入る」話でしたが、「入ってから飲む」のはどうでしょうか。医師の解説では、順番を守れば楽しめるという考え方が多く見られました。
飲むなら「サウナの後」に、まず水分と心拍を落ち着かせて
吉本医師は、サウナ後も入浴後も軽い脱水状態ではあるものの、「楽しみにしていた一杯を我慢してまずは水を飲みなさい」というほどのリスクはないと考える、と話しています。サウナ後や入浴後であれば、一般的な飲酒リスクと大きな差はないそうです。そのうえで「とにかくお酒を飲むのは、サウナ後、入浴後に」と、順番の大切さを強調していました。
尾形医師も、ビールを飲むなら「絶対にサウナの後」がおすすめだとしています。ただし条件があり、大切なのは心拍数が整ってからだそうです。アルコールには心拍数を上げる働きがあるため、サウナの後でも心拍数が高いうちに飲むと心臓に負担がかかります。水分をしっかりとって、脱水がおさまってから飲むのがよいとのことでした。食事と一緒にゆっくり楽しむのもよい方法として挙げられています。
消費者庁の資料では、入浴後は血圧が安定するまで30分ほど休憩スペースで休み、入浴後もコップ1〜2杯の水分をとるよう勧めています。こうした流れにあてはめると、サウナを出たら体をふいて着替え、まず水を飲み、30分ほど休んでからお酒、という順番になりそうです。日本サウナ・スパ協会も、一度に吸収できる水分は200ml程度と言われているとして、サウナの前後に200ml程度を基準にこまめな水分補給をするよう呼びかけていました。
もうひとつ気をつけたいのは、施設の中で「飲んでからもう1セット」としないことです。サウナ施設の食事処でお酒を飲んだあと、もう一度サウナ室へ戻れば、それは「飲酒後のサウナ」になります。お酒はその日のサウナを全部終えてから、と決めておくと迷わずにすみますね。
飲み方そのものにも工夫ができます。厚生労働省のガイドラインでは、健康に配慮した飲酒の仕方として、あらかじめ飲む量を決めること、飲酒前や飲酒中に食事をとること(血中のアルコール濃度を上がりにくくする効果があるそうです)、飲酒の合間に水を飲むことなどが挙げられていました。尾形医師も、サウナの後にすぐ寝る人は眠りが浅くなるので飲みすぎに注意してほしいと話しています。
水分補給に向く飲み物、向かない飲み物
サウナ後の水分補給には何を飲めばよいのでしょうか。尾形医師は、コーヒーやお茶はカフェインによる利尿作用があるので水分補給には向かないと話しています。お茶を飲みたいときは、麦茶のようなカフェインを含まないものを選ぶと安心です。また、サウナを3セット行っても失う塩分は1〜2g程度で、サウナ後の食事で十分補えるとのことでした。スポーツドリンクは塩分以上に糖分が多いため、習慣的に必要以上に飲むのは控えたほうがよいという意見です。
お酒の代わりに、ノンアルコールビールや低アルコールの飲み物を選ぶという考え方もあります。尾形医師は、サウナ後の1杯に低アルコールビールを勧めていて、サウナ後なら低アルコールでも十分に高揚感や満足感が得られる、と話していました。サウナの後に寝る場合、アルコールを飲むと利尿作用やのどの渇きで夜中に起きてしまうことがあるそうです。
なお、この記事はビールメーカーのサイトに載っているため、自社の低アルコールビールの紹介も含まれています。ここでは商品の評価ではなく、「心拍数が落ち着いてから」「水分補給をしてから」という医師の考え方の部分を参考にしてください。厚生労働省のガイドラインでも、飲酒の合間に水を飲むことや、アルコールの入っていない飲み物を選ぶことが、純アルコールの量を減らす配慮として挙げられています。
サウナに持っていく水は、凍らせたペットボトルや保冷ボトルに入れておくと、休憩のたびにすぐ飲めて便利です。施設によっては浴室内に飲み物を持ち込めないこともあるので、ルールを確認してから準備しましょう。
日本サウナ・スパ協会は、「サウナ室→水風呂→休憩」という流れの前に水分補給を加え、「水分補給→サウナ室→水風呂→休憩」を1セットとする「ととのう2.0」を提唱しています。尾形医師も、外気浴でリラックスしたあとに300mlほど水を飲み、これを1セットとして3セットほど繰り返すという自身のルーティンを紹介していました。お酒は、こうしたセットをすべて終えたあとのお楽しみにとっておくのがよさそうです。
気をつけたい人と施設での注意点
最後に、とくに注意したい人と、ひとりでサウナに入るときの考え方を見ておきます。フィンランドのデータからは、飲酒とサウナの組み合わせがどんな場面で危ないのかが見えてきます。
フィンランドのサウナ死亡データでわかること
サウナの本場フィンランドでは、サウナでの死亡について法医学の研究がいくつも行われています。2008年に法医学の学術誌に発表された研究(Kenttämies、Karkola)では、1990〜2002年にフィンランドのサウナで起きた死亡例が警察や解剖の記録から調べられました。要旨によると、サウナでの死亡は人口10万人あたり年2人未満とまれでしたが、全体の50%がアルコールの影響下にあり、アルコールの危険因子としての役割は大きくなっていると結論づけています。
日本温泉気候物理医学会の学会誌に掲載された、トゥルク大学の法医学者ペッカ・サウッコ氏の講演録では、フィンランド統計局のデータとして、1998年から2010年までにサウナで亡くなった人は475人(年に約36.5人)、そのうち約74%がアルコールの影響下にあったと紹介されています。男性では80%、女性では56%でした。講演録では、アルコールがこれらの死亡の大半で最も重要な要因に見えるとしたうえで、測定されたアルコール濃度の高さから、軽く1〜2杯のビールを飲んだ程度ではなく、習慣的に多く飲んでいた人が多いと考えられる、とも述べられていました。
2008年の研究は、予防のために「飲酒を減らすこと」と「酔った人をひとりでサウナに残さないこと」を挙げています。サウッコ氏の講演録では、フィンランドや北欧で死亡例が多く報告される理由のひとつとして、家庭のサウナにひとりで入ることが多く、まわりに助けてくれる人がいない点が挙げられていました。日本の入浴施設とは状況が違いますが、個室サウナやプライベートサウナが増えている今、知っておきたいデータです。
ただし、これらはフィンランドのデータで、日本の施設や入り方にそのままあてはまるわけではありません。それでも、「お酒」「高温」「ひとり」が重なったときに危ないという点は、日本の公的機関の注意と同じ方向を向いていると言えそうです。
持病のある人・中高年・個室サウナは特に慎重に
消費者庁の資料では、脳卒中後や心臓疾患、高血圧で治療中の人、妊娠中の人は、サウナを利用する前に主治医に確認するよう書かれています。受傷者の年齢は「40〜59歳」が28人、「60〜79歳」が25人で、年齢不明を除く全体の約7割です。事故事例の中には、以前に心筋梗塞を起こしたことがある人がスポーツクラブのサウナで心臓発作を起こし、3日間入院したという例も紹介されていました。
さらに、消費者庁は水風呂についても、サウナ直後に急に入ると血圧が上昇し、200mmHg程度まで上がったという報告もあると注意していました。前の章で見たように、お酒を飲むと血圧は下がりやすくなるのでしたね。厚生労働省のガイドラインが、飲酒によって「血圧の変動が強まる」と書いていることもあわせて考えると、血圧が気になる人ほど飲酒後のサウナは避けたほうがよいでしょう。ふだんから血圧が高めの人は、家で血圧を測る習慣をつけておくと、自分の状態を知る手がかりになります。
サウナ室での座る場所にも気を配りましょう。消費者庁の資料によると、サウナ室はひな壇を1段上がると10℃ほど温度が上がります。最初から上段に座ると急な高温で血圧が急上昇する危険があるため、まずは下段に座り、体が慣れたら上へ移るよう勧めていました。入る前に温かいシャワーを手足の先から体の中心へ順番にかけるのも、血圧の急上昇を防ぐ方法として紹介されています。
個室サウナや貸切サウナでは、体調が悪くなっても気づいてくれる人がいません。消費者庁は、サウナ室で体調に異変を感じたら、すぐに周囲の人や施設の従業員に知らせるよう呼びかけています。仲間と入る場合も、お互いが飲んでいないかを確認し、酔っている人をひとりでサウナ室に残さないようにしましょう。施設に掲示されている入浴上の注意事項を確認し、「飲酒された方の入浴はお断り」といったルールがあれば必ず従ってください。
なお、この記事は公的機関の資料や医師の解説をもとに一般的な注意点をまとめたもので、個別の診断に代わるものではありません。持病がある人や薬を飲んでいる人は、主治医に相談してからサウナを利用してください。
まとめ
消費者庁は、サウナを避けるべきときとして「飲酒後(二日酔いも含む)」を挙げています。厚生労働省のガイドラインも、飲酒中や飲酒後の入浴を「避けるべき行動」としていて、その根拠のひとつになった研究では、お酒とサウナを組み合わせると上の血圧が136から113mmHgに下がっていました。アルコールの血管拡張作用と、利尿作用や汗による脱水が重なることが、主な理由として説明されています。
「汗でお酒を抜く」「二日酔いをサウナで治す」という考え方は、医師の解説では否定されていました。純アルコール20gの分解に約4時間という目安を使えば、前の晩に飲んだ量からおおよその時間を計算できます。お酒はその日のサウナを終えてから、水を飲み、30分ほど休んで心拍が落ち着いてからにしましょう。次にサウナへ行く日は、まず「今日は飲んだあとじゃないか」を確かめるところから始めてみてはいかがでしょうか。